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「人の不幸は蜜の味。嘆いて育て。悲しく育て。」 ノーザが歌うようにそう言いながら、植木の根元に液体を注ぐ。 青い水差しの口から流れ出るのは、濁った黄土色の不幸のエネルギー。だがそれは、いつものようになみなみと注がれはせず、すぐに糸のような細い流れになると、やがて滴となって、植木鉢の半分も満たさぬうちに止まった。 「あら・・・もうお終い?」 ノーザが残念そうに呟く。不幸のゲージが破壊された今となっては、これが最後の不幸のエネルギー。植木はいつものように、ゴクゴクと音を立てて注がれた液体を吸収したが、枝先に現れたのは、いつもの半分にも満たない、小石のようにごく小さなソレワターセの実だった。 「ふん、まぁいいわ。」 ノーザの真っ赤な爪が、葉のほとんどない、干からびたような枝に伸びる。最後に出来た小さな実には目もくれず、まだ枝に残っていた比較的大きな実の下に手を翳すと、実はポトリとノーザの掌の上に落ちた。続いてもうひとつ。 「ひとつめは、インフィニティを連れ去るため。二つめは、ヤツらがもしラビリンスまで攻めて来るようなことがあったら、それを迎え撃つため。そして残りのひとつは・・・フフフフ・・・」 最後は、出撃中のソレワターセとの通信機として使っていた一番大きな実を摘み取ると、ノーザは三つの実を握り締め、ニヤリと口の端を上げた。 植木鉢のすぐ隣にある机の上には、蓋をした広口瓶が置かれている。中にはその大半が黒ずんだ一枚の葉と、その下でまだ存在を主張している小さな光。だが、最初は目も眩むばかりだったその光も、今では瓶の周りを弱々しく照らすばかりだ。 「もう少し・・・。あともう少しで、インフィニティが手に入る。」 嬉しそうにそう言って、部屋の奥へと消えていくノーザ。ただひとつ残された小さな実は、その後ろ姿を、枝先からポツンと見送った。 しばらくして、部屋の壁の一角がぐにゃりと歪み、次元の扉が開かれた。やって来たのは幹部の一人、ウエスター。キョロキョロと落ち着きなく部屋の中を見回すと、植木鉢の向こう側にあるソファに目をやって、パッとその顔をほころばせた。 「あった・・・。これが無いと、ドーナツが食べられない。全く、不便な世界だ。」 ウエスターが植木の横から、ソファの上に置いてあった財布に手を伸ばす。その戦闘服の袖が、植木の枝に引っかかった。いや、よく見ると、何だか枝の方から袖に引っかかりに来たようにも見えた。 細い枝が、パシンと音を立てて撥ね返る。ウエスターはそれには気にも留めずに、再びいそいそと次元の扉をくぐった。 その後ろから、灰緑色の小さな木の実が――さっきの衝撃で枝から離れたらしい、最後のソレワターセの実が、音も無くコロコロと転がって、密かに次元を超え異世界へと――四つ葉町のある世界へと、旅立っていった。 The Last Nut(前編) 「うわぁ!商店街は、もうすっかりクリスマスだね!」 ラブが歓声を上げて、隣りを歩くせつなにニッコリと笑いかける。せつなも、ええ、と頷いて、降り注ぐ日の光に、眩しげに目を細めた。 太陽は、今日もこんなに明るく輝いているけれど、吹く風は肌を刺すように冷たい。もう十二月も半ば。このくらいの寒さは、この世界では当たり前のことらしい。 普段は朝と夕方しか通ることのない商店街。その上、このところダンスレッスンが忙しくて、毎日駆けるようにここを通り過ぎていた。 久しぶりにこうしてゆっくりと眺めてみると、街全体に、何だか浮き立つような雰囲気がある。 広場の大きなクリスマス・ツリーの飾り付けはこれからだが、最近までは無かったはずの様々なクリスマスの飾りが、クローバータウン・ストリートを彩っていた。 色とりどりのきらびやかなモール。華やかで愛らしいクリスマス・リース。サンタクロースのステンドグラスや、店全体をプレゼントに見立てて大きなリボンを壁に這わせている店など、それぞれ思い思いのデコレーション。どれも見ているとワクワクして、心が温かくなってくる。 「ねぇ、おかあさん。サンタさん、あのぬいぐるみ、くれるかなぁ。」 おもちゃ屋さんの前から、何だかヤケに真剣な幼い声が聞こえた。ショーウィンドウにペタンとおでこをくっつけて中を覗いていた小さな女の子が、心配そうな顔つきで、母親を振り返っている。 母親は優しい笑顔を見せて、女の子の頭を撫でた。 「ええ。いい子にしてたら、きっとサンタさんが届けてくれるわ。」 「じゃあわたし、いいこにしてる!」 女の子がぴょんと跳びはねて、母親と手を繋ぐ。 歩き始める二人の後ろ姿に、せつなはホッと小さく溜息をついた。 「ねぇ、ラブ。小さい頃は、ラブもサンタさんを信じていたのよね?」 「う、うーん・・・あたしの場合は小さい頃っていうか、結構大きくなるまで信じてたんだよね。ナハハ~。」 照れ笑いで頭をかくラブに、素敵ね、とせつなはポツリと呟く。 「いや、素敵って言うより、それはねぇ・・・せつな?」 「もしも小さい頃に、サンタさんの伝説があるような世界に居たとしても、私は・・・」 せつなはそう言いかけて、慌てたように首を横に振った。 「ごめんなさい、何でもないの。」 その少し寂しげな笑顔を見て、ラブの言葉に思わず熱がこもる。 「せつなだって、今からサンタさんを信じる・・・ってのは、もう知ってるから無理か・・・でもでもっ、これからいくらだって、最高に楽しいクリスマス、過ごせるよ! みんなでご馳走を食べて、ケーキを食べて、ゲームしたり、プレゼントを交換したり。 クリスマスって、ほんっと楽しいんだからっ!」 ねっ?と上気した顔で笑いかけるラブに、せつなはクスリと笑って、そうね、と微笑み返す。 「あ、じゃあさ、今日は無理だけど、明日ダンスレッスンの前に、お父さんとお母さんのプレゼント、一緒に買いに行こうよ!」 今日はあゆみに頼まれて、クリスマスに飾るポインセチアの鉢植えを買いに来た。帰ってお昼ご飯を食べたら、午後はみっちりダンスレッスン。とてももう一度買い物に行けるような時間は無い。 「ええ、わかったわ。小さい頃と違って、大きくなったら、それぞれがお互いのサンタクロースになるってわけね?」 「そう!せつな、良いこと言う!」 せつなの言葉に、ラブがキラキラとその瞳を輝かせたとき。 「あ、ラブおねえちゃん、せつなおねえちゃん!」 可愛らしい声が、二人を呼び止めた。 白いフード付きのコートを着て、お母さんと一緒に手を振りながら歩いて来たのは、二人と仲良しの女の子、千香だった。 「へぇ、ポインセチアって、クリスマスの花なんだ。」 千香が感心したように、ラブとせつなの顔を交互に見つめる。 ラブたちが病院で千香と知り合ったとき、せつなはまだその場に居なかった。だが、夏休みの最後に、二人は偶然知り合った。今ではせつなは千香にとって、ラブたちと同じ、仲の良い優しいおねえさんだ。 「千香ちゃんも、お母さんとお買い物?」 せつながそう問いかけると、今まで楽しそうだった千香の顔が俯いた。 「・・・病院に行ってきたの。最近、ちょっとだけ胸が苦しいから、先生に診てもらったの。」 「そう・・・それで?」 心配そうに眉根を寄せるラブとせつなに、千香のお母さんが、静かな口調で言葉を繋ぐ。 「今日の診察では、大したことは無いんじゃないかって言われたんですよ。 でも、念のために検査しましょうって。それで何か悪いところが見つかっても、病院に行ったのが早かったから、治りも早いだろうって言われたんです。 だからね。千香ちゃんも、あんまり心配し過ぎちゃダメよ。」 「はぁい。」 お母さんの言葉に、千香はようやく顔を上げた。 「検査の結果が何でもなかったらね、千香、今年は先生になるんだよ。」 ふいに、千香がそう言って、少し得意そうな顔をする。その顔を見て、せつなも笑顔になった。 「先生って、なんの?」 「病院の中にある学校でね、クリスマス・リースの作り方、みんなに教えてあげるんだ。先生に、お願いって言われたの。」 「へぇ。凄いね、千香ちゃん!」 真っ直ぐなラブの言葉に、千香は少し弱々しいながらも笑顔で頷いて、バイバイ、と二人に手を振ってみせた。 「千香ちゃん・・・何ともなければいいわね。」 「そうだね。千香ちゃんもお母さんも、早く安心したいよね。」 去って行く二人を見送って、せつなとラブは、そっと溜息を付いた。 ☆ 二人が異変に気付いたのは、花屋に着いたときだった。 こんにちは~、と呼びかけるラブに、店の奥から花屋の看板娘が姿を見せる。クローバーの四人とも仲良しで、彼女たちが「花屋のおねえさん」と呼んでいる人物だ。 「あら、ラブちゃん、せつなちゃん、いらっしゃい。今日はなぁに?」 「ポインセチアの鉢植えが欲しいんですけど・・・」 ラブがそう言いかけたとき、通りの向こうで、ガチャンと何かが落ちるけたたましい音が聞こえた。 せつなが後ろを振り返る。そこには、信じられないものを見ているような顔つきで花屋のおねえさんを見つめる、お向かいのパン屋のおじさんの顔があった。足元に転がっているのは、パンを乗せたトレイとトング。今の音の正体は、これだったらしい。 「おじさん、どうしたんですか?」 花屋のおねえさんの問いかけに、おじさんは裏返った声で答える。 「え・・・。キ、キミ、たった今、そっちに走って行ったんじゃ・・・。うちのパンを試食して、蕎麦屋のおにいちゃんと立ち話して、それから・・・そっちに行ったよな?ど、どうして、店の中から・・・?」 「え・・・何言ってるんですか。パンの試食って、昨日は確かに新作を試食させてもらったけど・・・。それに、お蕎麦屋さんには、今日はまだ会ってないですよ。わたし、さっきまで店の奥で電話してたんですから。」 戸惑ったように、首を傾げる花屋のおねえさん。その言葉を聞いて、まだトレイを拾おうともしないで立ち尽くしていたパン屋のおじさんは、我に返ったように、キョロキョロと辺りを見回した。 「あ、居た居た。お蕎麦屋さん!ちょっとこっちに来てよ。」 おじさんの声に振り向いたのは、バイクを止めて、何だか不貞腐れたような顔で缶コーヒーを飲んでいる、蕎麦屋のおにいちゃん。心なしか、その目の辺りが赤くなっている。 「いいですよ。俺ぁ、どうせフラれたんだぁ~。」 「その話じゃ無いんだよっ。いいからこっち・・・」 「あんなに早くから約束してたのに、あの言い方はないでしょ?一緒にラブちゃんたちを応援に行こうって・・・あれ?」 なおもブツブツ言っていた彼の虚ろな目が、ラブとせつなを捉えた途端、驚いたように丸くなった。 「・・・ラブちゃん、せつなちゃん。ここに居たのかい?俺はまた、てっきりダンスの練習してるんだと思って、さっき花屋さんに・・・え。」 蕎麦屋のおにいちゃんの目が、今度は驚きのあまり、丸から点になる。 その視線の先には、トレイとトングを拾って、大切そうにパン屋のおじさんに手渡している、花屋のおねえさんの姿があった。 「ど・・・どうして・・・。さっき、ラブちゃんたちの居場所を俺に尋ねて、公園の方に行ったんじゃ・・・」 「ラブ!行くわよ!」 せつなが突然、その言葉を皆まで聞かずに、通りに飛び出した。 「ちょ、ちょっと!せつな、待ってよぉ!」 ラブが慌ててその後を追う。 「どうしたの?おねえさんなら、ちゃんとそこに居たじゃない。」 「・・・ソレワターセかもしれない。」 「えっ?」 「お母さんのときみたいに、ソレワターセがお花屋さんになり澄ましていたのかも。」 せつなの言葉に、ラブが息を呑む。 「じゃあ、本物は・・・」 「今、お店に居る方が本物よ。パン屋さんが新作を作っていることを知ってたし、おじさんのパンを、とっても丁寧に扱ってたもの。」 「それじゃニセモノの方が、あたしたちの居場所を?」 「ええ。シフォンが危ない!」 その言葉を聞いて、ラブの表情が、キリリと引き締まった。 「わかった。じゃあ、あたしは先にタルトとシフォンのところへ戻ってる!」 言うが早いか、ラブは元来た道を全速力で走り出す。 せつなもそれを見届けると、なお一層足を速めた。 だが――商店街を通り抜け、公園へ行き着いてみても、それらしい人影は、どこにも見当たらなかった。 ☆ 同じ頃、祈里は自宅である山吹動物病院の入り口に立っていた。 このところダンスの練習で忙しかったので、久しぶりの病院でのお手伝い。もっとも、午後からは練習があるから短い時間ではあるけれど、祈里にとって、それはとても大切な時間だ。 おまけに今日は運が良いことに、退院する患者さんとその飼い主を見送ることができた。元気になったペットと、その子を嬉しそうに連れて帰る飼い主の姿を見るのは、このお手伝いをしていて一番嬉しいこと。祈里が将来獣医になりたいという動機の、根っこにもなっている風景だ。だからいつものように、次の患者さんのために診察室から出られない両親に代わって、病院の玄関まで、彼らを見送って出たのだった。 「寒いっ!」 白衣姿の肩をぶるっと震わせて、暖かな室内へ戻ろうとする。そのとき、見慣れた大きな影が目の前を走り抜けたのを見て、祈里は驚きに目を見開いた。 「・・・ラッキー?」 山吹動物病院ではおなじみの、大型犬のラッキー。しかし、今日はいつも一緒に居るはずの、飼い主のタケシ少年の姿が見えない。リードの持ち手は地面に当たって、カシャカシャと頼りなげな音を立てている。 「ちょっと待って、ラッキー!あなたひとり?タケシ君はどうしたの?」 祈里が思わずそう叫んで走り出す。その腰に付けたリンクルンから、さっと黄色い光が飛び出して、一直線にラッキーを追った。祈りの鍵・キルンが、ラッキーの頭上をくるくると回る。 ラッキーは不意に立ち止まると、キルンに向かって、ウー・・・と低く唸り声を上げた。 ――忌々しい妖精め!食われたいのか! (・・・え?) 祈里が呆然と立ち尽くし、キルンが一目散にリンクルンへと逃げ戻る。再び走り出したラッキーは、通りをどんどん駆けて行って、あっという間に見えなくなってしまった。 「あ、祈里おねえちゃーん!」 ラッキーの姿が見えなくなるのと同時に、祈里の後ろからかけられる無邪気な声と、元気の良い犬の吠え声。振り返るまでもなく、彼女はその声を聞いて、三度驚きに目を見開いた。 嬉しそうに駆け寄ってくる、一人と一匹。それはタケシ少年と――彼の大切な家族である、大型犬・ラッキーだった。 ☆ 美希は、出がけに母親のレミに声をかけようと美容院に一歩入ったところで、ひっ!と小さく悲鳴を上げた。 美希の頬を掠めて、何か赤黒い小さな物が、ひゅん、と店の中を横切ったのだ。 (な・・・なに?) ゴクリと唾を飲み込んで、慎重に店の中を見回す。 奥に何か取りにでも行っているのか、レミの姿は無い。店にはお客さんが一人だけ。カーラーを巻いた姿で居眠りしている、初老の女性だ。その女性の目の前にある鏡に、美希の目が釘付けとなった。 鏡の中の、俯いて小さく舟を漕いでいる彼女の姿が、ゆっくりと顔を上げて、店の中を窺ったのだ。鏡の外に居る当の本人は、その間もずっと居眠りを続けているというのに。 (一体なんなの?アレ・・・。) こわごわ鏡を見つめている美希の視線に気付いたのか、鏡の中の女性が慌てたように俯いた。そして次の瞬間、さっきと同じ小さな物体が、ぴょんと鏡の中から飛び出した。 (・・・あれは!) 一瞬の驚愕の後、美希の顔に焦りが走る。 さっき赤黒く見えたのは、光の加減だったのか――それとも単に苦手意識のなせるワザなのか――今は灰緑色に見える、ピンポン玉のような姿。 (あれは・・・ソレワターセの素!) 人並み外れて目の良いせつなならともかく、もしもこれがラブか祈里だったなら、きっとその正体が判りはしなかっただろう。 美希だけが、実の状態のソレワターセを間近で見たことがあった。サウラーにクローバーボックスを奪われそうになったとき、彼はその実をキュアベリーに見せつけていたのだ。 小さな実は、音も立てずに二度、三度と床でバウンドしてから、自動ドアの前にその身体を叩きつけ、開いたドアから勢いよく外へと飛び出した。 美希も慌てて後を追う。店を飛び出すと同時にリンクルンを取り出し、走りながら耳に当てた。 「美希ちゃん?あなた、もう出かけるの?」 物音に気付いて、レミが店の奥から出て来る。が、そのときにはもう、美希の姿はどこにも無かった。 ☆ 「じゃあ、あれはやっぱりソレワターセの実なのね。」 険しい顔つきで尋ねるせつなに、美希も真剣な表情で頷く。ラブも祈里も、そしてタルトも、さすがに表情が硬い。シフォンだけが嬉しそうに、風にカラカラと舞う落ち葉を追いかけている。 ラブたち四人とタルトとシフォンは、いつものドーナツ・カフェに居た。 相手がソレワターセだと判った以上、家に居るのは危険だ。またあゆみや圭太郎を巻き込むわけにはいかないし、たとえ隠れてやり過ごそうとしても、どこまでも追って来る相手である。迷った挙句、結局ここに集まることになったのだった。 カオルちゃんは、いつものメンバーが顔を揃えたのを見て、これ幸いと買い出しに出かけてしまった。ラブたちにとっても、これは好都合だ。 「あれって、実なのね?道理で大きさが揃っていないわけだわ。この前見たのより、随分小さかった。」 美希の問いかけに、せつなが少し辛そうな顔をして、コクリと頷いてみせる。 「ええ。私も話に聞いたことがあっただけで、実物を見たのは、ノーザがこの世界に現れたときが初めてだけど。」 ソレワターセの実を育てる肥料は、不幸のエネルギー。これは、幸せが無い代わりに不幸も無いラビリンスでは、集められないものだ。 最高幹部・ノーザだけが持つ、最強の秘密兵器を生み出す実――ラビリンスに居た頃、せつなが聞いていたのはその程度の情報だった。 「それで、どうする?ソレワターセの実は、この前のあゆみおばさんの時みたいに、誰かになり澄ましてやって来るんでしょう?見分ける方法は、無いのかしら。」 祈里が不安そうに、三人の顔を見回す。 「ソレワターセは、姿はそのまま真似出来ても、記憶や性格までは映し取れないわ。 だから、その人なら当然知っていて、他の人が知らないようなことを尋ねてみれば、本物かどうかわかるはずよ。」 せつなの言葉に、ラブが大きく頷いた。 「そうだね。あのときは、お母さんがせつなに作ったブレスレットを、せつなのだって知らなかったから、判ったの。 だから、あたしたちが知ってる人なら、きっと見分けられるよ!」 経験者である二人の説明に、美希と祈里が、まだ少し不安そうながら、納得したように頷く。 「ただ・・・どうしてそんなに、次から次へと違う姿になっているのかしら。」 せつなが真剣な表情で、誰へともなく問いかける。花屋のおねえさんから、犬のラッキー、そして未遂に終わったけれど、美容院のお客さん・・・。わかっているだけで、短時間にそれだけの姿になっているのだ。 「せやなぁ・・・。何か、ひとつの姿ではおられんワケでもあるんやろか。」 「ひとつの姿で居られない、ワケ?」 ラブが不思議そうな顔で、タルトの言葉を繰り返したとき。 「誰か来るわ!」 公園の入り口から近付いてくる気配に、せつながいち早く気付いて、皆に警告を発する。 「ここに居たんだ・・・。探したんだよ。」 途切れ途切れにそう言いながら、一人の人物が、ゆっくりと四人に近付いてきた。 ~前編・終~ 新2-446へ
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百合 名前 百合 異名・肩書 年齢 15歳 身長 体重 スリーサイズ ブラのカップ 種族 職業 高校生 属性 性別 女 性格 誕生日 血液型 年代 利き手 魔法 特技 得意な技 ありません・・ 長所 短所 戦法 装備品右手 装備品左手 装備品鎧 装備品兜 装備品アクセサリー 所持品 瞳の色 髪の毛の色、長さ 容姿の特徴・風貌 その他特徴 趣味 趣味?・・ないですけど、別に・・・ 恋人の有無 ・・・いないです 好きな異性のタイプ やさしければそれで・・・ 自分の恋愛観 好きなもの 嫌いなもの 好きな食べ物 和食 最近気になること えーと・・、高校のことかな・・。 一番苦手なもの ええと、いろいろ 人生のモットー ありませんけど・・・ 一番の決めゼリフ ・・・・ 好きな人と、一緒にいたいです。 将来の夢(目標) 簡単なキャラ解説 (キャラネタ時代『■妹だよっ肆■』) 114 名前: 百合 ◆BV.fqgxxRU [sage] 投稿日: 04/04/04 11 27 名前 : 百合 年齢 :15歳 性別 :女 職業 : 高校生 趣味 : 趣味?・・ないですけど、別に・・・ 恋人の有無 :・・・いないです 好きな異性のタイプ : やさしければそれで・・・ 好きな食べ物 : 和食 最近気になること :えーと・・、高校のことかな・・。 一番苦手なもの : ええと、いろいろ 得意な技 : ありません・・ 一番の決めゼリフ : ありませんけど・・・ 将来の夢 :・・・・ 好きな人と、一緒にいたいです。
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アジア版うたって!プリキュアドリームライブ 〜スピッチュカードでメタモルフォーゼ!?〜 商品概要 不明 概要 うたって!プリキュアドリームライブのアジア版。 あまり日本には情報が存在せず、その存在がまことしやかに語られているのみである。 1stライブから6thライブまで展開したと言われ、収録内容は異なっている。 基本的には日本版と同じ加工ではあるが、イラスト全体・箔押し・ホロ加工すべての色合いが異なっていたり、裏面のカードナンバーのフォントやコピーライト表示も異なっている。 またGRがクリアカードではなく、通常の紙製のカードとなっている。 存在は確かなものの、どのカードが存在し、どのように展開されたかは全て謎である。 関連項目 カードリスト アジア版 うたって!プリキュアドリームライブ
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その日の夜。 あれから、家に戻ったラブは、せつなの部屋を訪れて さっきのことを謝ろうと思ったが、どうしてもドアを叩くことが出来なかった。 夕食の時は流石に家族4人で一緒だったが、いざ二人の間で会話をしようとすると どうしてもぎこちなくなってしまう。 何かあったことを察したあゆみが上手くフォローしてくれたので、 気まずい空気になることは無かったものの、 すぐ隣に居るはずのせつなとの間に 見えない壁があるような違和感は終始拭う事が出来なかった。 その後は、せつなはすぐ自分の部屋に篭ってしまったので、それからは口を聞いていない。 居間でTVを見ながら時間を潰していたラブも、 観ている内容が全く頭に入ってこないので自分の部屋に戻ることにした。 部屋に入ると灯りもつけず、投げ出すようにベッドに身を横たえる。 「ハァ……」 口から出るのは、溜息一つ。 そしてそのまま、何をするでもなく、ただぼっーっと天井を見ているだけ。 「ピーチはん」 「ラーブー?」 そんな彼女に声を掛けたのは部屋にいたタルトとシフォン。 二つの影は、心配そうにラブの顔を覗き込んでいる。 「あ、タルト、シフォン、どうしたの?」 「どうしたもこうしたもあらへん、どないしたんや? なんや今日はピーチはん、様子がヘンやで」 「……んー、そんなことないよ、なんでもなーい」 「何でも無いって事はないやろ、ワイの目は節穴じゃおまへんで? ……パッションはんのことやろ?」 「えっ!いやいやそんなことはないって!せつなは関係ないってば!」 タルトの指摘を大慌てで否定するラブ。 「……ホンマにわかりやすいな、あんさんは」 「……うう~」 「そういえば今日はパッションはん、こっちにまだ来てへんな」 いつもならこの時間は、せつながラブの部屋に来ている筈である。 今日あったこと、明日の予定、学校での事、ダンスの事、そんな他愛も無い話をしたり、 時にはお互いの不安や寂しさを打ち消す為に、一緒にラブのベッドで寝たりする時間。 この時間にはタルトは二人に気を遣って、 シフォンを連れて隣のせつなの部屋に移動するのだが、そのせつなが来てないとなると。 「もしかしてピーチはん、パッションはんとケンカでもしたんか?」 「……っ!!」 核心を突いたタルトの言葉に、ラブの体が一瞬ピクリと震える。 「……」 「ピーチはん?」 「…………」 「どないしました、ピーチはん?」 「……タルトぉ」 身を起こして、タルトの方に振り向くラブ。 その瞳は潤み、溜め込まれた涙が今にも零れ落ちそうになっている。 「ホ、ホンマにどないしたんや、ピーチはん?!」 動揺したタルトの問いかけに、ラブは潤んだ瞳に更に涙を滲ませる。 「あたし……あたし…………多分、せつなに嫌われちゃった……」 ガバッとタルトに抱きつくと、 堰を切ったように目から涙を溢れさせて泣きじゃくるのだった。 「ピーチはん、落ち着きましたかいな?」 「……うん、ありがとタルト」 しばらくして、ようやく落ち着いたラブから離れると、 タルトはティッシュを数枚取ってラブに手渡す。 「ほれ、これでまずは涙をふきなはれ……ってそっちはワイの尻尾や! しかも何で鼻をかもうとしてはるんや!」 「……アハハ、ごめんごめん」 「ちっとは元気出たようやな」 「うん……本当にありがと」 笑ってみせるラブの様子を見て、 これなら大丈夫そうやな、と判断したタルトは、さっきの話の続きを促す事にする。 「それで、パッションはんと一体何があったんや、ワイに話してみい。 力になれるかもしれまへんで」 「ええーっ?タルトが?」 「言うてくれるな~こう見えてもワイはな、紆余曲折の末にアズキーナはんという 立派な婚約者をゲットしてるんやで。色恋沙汰の事ならピーチはんよりも よっぽど先輩や。 ま、そんなワケで泥舟に乗った気でここは一発どーんと相談してみなはれ!」 「……泥舟?」 「ああっ!……こ、これは重ーい話題の中にもささやかなボケを挟み込むという ワイ独特の話術の一つやから……コホン、まあそんなことはええから話してみ」 「……うん」 言ってる事には半信半疑だったが、ラブは頷く。 自分で抱えているより、誰かに聞いてもらった方が気持ちが軽くなるかもしれない。 それに、タルトなりに心配してくれているのは確かなのだ。 その気持ちには応えるべきだと思ったから。 「……なるほどなあ、キスして貰えんかったからパッションはんが拗ねてもうたと」 「うん……多分」 「じゃあ簡単やないか、ピーチはんがキスしてあげたらええんや」 「うっ……それは」 「出来へんのか?」 「……うん」 「何でや?ピーチはん、パッションはんのことを好きなんやろ?」 「それは勿論!あたしはせつなのこと、大好きだよ!」 「だったらなんでや?好きだったら、キスの一つや二つ、簡単やろ」 タルトの問いかけに、ラブは目を閉じて首を振る。 「違うよ、タルト」 「違うって、何がや?」 「……好きだからこそ、ダメなんだ」 「わからんな~どういうことや?」 「……それ、せつなにも言われたよ。 そりゃーわからないよね……ねえタルト、タルトがアズキーナと知り合ったのは何時?」 「何や急に……ワイとアズキーナはんか? そりゃーもう、ワイら二人はまだこーんな子供のころから将来を誓い合って、 それから幾千万の困難を手を取り合って乗り越えて……」 「やっぱりそうだよね」 「……って、まだ話の途中やがな」 「美希タンとブッキーもそう、幼馴染だから、お互いのことを良く知ってるから」 二人が幼馴染としての付き合いを続けていく中で、 お互いに対する想いを深めていったこと、 やがて想いが通じ合い、結ばれたこと。 それは近くで見ていたラブが一番良く知っている。 そして、結ばれた二人を祝福しつつも、ずっと一緒だと思っていた幼馴染の三人が 今までと違う関係になってしまったこと、そしてその中に自分が含まれて居ない事に 一抹の寂しさを感じたこともよく覚えている。 「そんな時だったよ、せつなが現れたのは」 一人取り残されたような気持ちになったラブの前に現れたのは、 町外れの占い館に住む、不思議な雰囲気を持った少女。 「初めて会ったときから、なんか気になってたんだ。 ……で、次に街の中でせつなと再会した時に、とっさに確信したんだ。 ああ、あたしにも運命の人が現れたんだって」 そう確信したから、せつなと会える時間を大切にした。 ドーナツの美味しさを教えてあげたし、自分の幸せを考えた事も無いという彼女の為に 幸せの素と言う名のペンダントをプレゼントした。 せつなが寂しそうにしている時は心配したし、 コンサート会場で倒れた時には、大切に想っているという自分の気持ちを伝えようとした。 「……それで、とっても辛い思いをしたこともあったよ」 せつながラビリンスのイースだと知った時、 折角掴んだものが手の中から逃げていってしまったと思って、一度は絶望した。 これが運命なら、なんて酷いんだろうとすら思った。 でも、美希に背中を押されて、カオルちゃんにヒントを貰って、そして決めた。 「あたしは、あたしの運命の人を絶対に諦めない。 ……絶対に、取り戻してみせるって」 その想いは身を結び、死という二度目の絶望も、アカルンの奇跡の力で乗り越えて、 そしてせつなは、ラブの元にようやくやって来た。 「そうまでしてせつなを取り戻したというのに、 その途端にあたし、不安で仕方なくなっちゃったんだ。 あたしはせつなが好き。だけどせつなは……どうなんだろうって。 今までずっと、あたしだけが一方的に、 せつなのことを想ってただけなんじゃないかって」 「それは違うと思うで。ワイが見る限り、 パッションはんはピーチはんのこと、好きな筈やで」 ラブの弱気な言葉。それを否定するタルト。 「……でなきゃ、ワイとシフォンは毎日わざわざ隣の部屋に移動することはあらへんやろ。 あんさんらどんだけイチャついてんねん、正直目の毒やで、と思ってるくらいや」 「アハハ……いつもごめんね~」 「だから弱気になることはおまへん、 あんさんらの仲の良さはワイがちゃーんと保証したる!」 張った胸をドーンと一回、力強く叩いてみせる。 「うっ!ちょっと強く叩き過ぎたわ。ゲホッ、ゲホッ」 格好付けたつもりが思わず咳き込んでしまうタルトの姿に ラブはクスッと笑って見せるが、すぐに眉尻を下げた顔に戻ってしまう。 「でも……せつなは、まだこの世界をよく知らないんだよ。 知らないから、毎日新しいことを知って、新しい人と出合って、どんどん変わっていく。 あたしは、その事はすごく嬉しいことだと思ってる」 ラブの家に来たばかりの時は、家の中とラブ、美希、祈里と圭太郎とあゆみの5人。 これがせつなの世界の全てだった。 でも今は、街の人々と知り合い、学校で友達も出来た。 ラブと一緒でなくても、一人で出かけるようにもなった。 少しずつ、確実に、せつなの世界は広がっている。 「でも、だとしたら、せつなが変わっていく中で、 あたしのことも好きじゃなくなっちゃうんじゃないかな? 最初に出会って、一番一緒にいる時間が長いのがたまたなあたしってだけで、 せつなは、本当に大切な人にまだ出会ってないんじゃないかなって、 そう考えた時に、あたし、せつなにキスしてあげることが出来なくなっちゃった。 ……せつなの大切なものを、あたしが奪っちゃっていいのかどうか、 わかんなくなっちゃったから」 ようやく辿り着いた、ラブの本心。 せつなの変化を誰よりも喜んでいるのに、 それがせつなの気持ちを変えてしまうのでは無いか、 その時に、せつなの隣に立っている人間が、自分じゃない他の誰かなのではないか。 その恐れが、ラブに二人の仲を一歩進めることを拒ませている。 6-398へ
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名前:百合 リアル娘の名前から盗りました 職は水ですね。錬金術師もしておします ちなみに・・武器は作れません。防具だけです リアル:看護師+栄養士 マジきついにゃ:: 趣味:リアル旦那とガチぷよぷよ勝負 最高18連鎖だして旦那KO その他 最近まったりとLv上げ中・・。 ゲリラ2倍イベント大っきらいな百合です。
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「ぅわ~っ! 美希たん、それカッコイイ!」 「うん、すっごくキレイ…」 「これはね、ロケットっていうんだって。ママが買ってくれたのよ。 ほら、ここが開くんだから」 「あ、ホントだ…でも、ここに何か入れるの?」 「ここに好きな人の写真を入れると、その人と結ばれるんだって」 「美希ちゃん、好きな子がいるの?」 「ううん。でも、大きくなったら、好きな人の写真を入れるんだ。 そして…アタシは、その人と結ばれるの!」 「うん! きっと美希たんなら、ちょーイケメンの彼氏と、幸せゲットだよね!」 「そうだね。私も、信じてる!」 「はぁ…」 土曜日の昼下がり。 祈里は一人、隣町のデパートへ来ていた。 キレイな洋服に、可愛いアクセサリー。 ペット用品売り場に、書店の「動物の本」コーナー。 いつもは楽しい買い物のはずなのに、ちっとも楽しくない。 きっと、今朝見た夢のせいだろう。 それはまだ、許されぬ想いを抱く前のこと―。 【 message for you・第2話 】 あれは確か、中学に入る少し前だったろうか。 親友の胸元で、銀色に輝くロケット。 大人びた雰囲気の美希に、とてもよく似合っていた。 あのロケット、今はどうしているのだろう? ふと、想像してしまう。 彼女の細い首から提げられた、銀のロケット。 その中には、きっと私の知らない誰かの写真―。 「…はぁ…」 私、信じられない。 私、信じたくない。 想像すればするほど、気分は重くなる。 今も一人、ベンチに腰掛けてため息をつくばかり。 『…美希ちゃん…』 今頃、どうしているのかな。 カズちゃんとお出かけ? それとも、別の誰かと? その“誰か”の隣で、美希ちゃんは楽しそうに微笑んで。 手をつないで、腕を組んで、そして―。 「……っ……」 胸の奥が、きゅっと締め付けられる。 そんな美希を想像して。 そんな美希を祝福する、自分の姿を想像して。 『おめでとう、美希ちゃん!』 『すっごく素敵な人ね!』 『ううん、美希ちゃんなら当然だよ。私、信じてた!』 ……何を? 『もう…帰ろう』 祈里は、ベンチから立ち上がった。 一度深呼吸をして、トートバッグの中を覗き込む。 その中には、美希に宛てた白い封筒。 こんなもの、もう捨ててしまおう。 そうすればきっと、この想いも忘れられる。 だから、誰にも見つからないように、隣町までやってきたんだもの。 ビリビリに破いて、どこかのゴミ箱に捨ててしまおう。 封筒も、手紙も、私の想いも。 そしたらきっと、いつもの“ブッキー”でいられる。 みんなと笑いあって、カオルちゃんのドーナツを食べて、ダンスに打ち込んで。 そんな、いつもの私に戻れる。 …私、信じてる。 祈里の歩調は、いつになく早かった。 やがて視線の先、エスカレーターのすぐそばに、ゴミ箱を見つける。 何もかも、これで終わりになる。終わりにできる。 そう思うと、足取りは更に早くなる。 そして祈里は、 「……っ!」 脇の通路から現れた人影に、気付かなかった。 「きゃっ!」 「きゃぁっ!」 尻餅をつき、バッグの中身を床にバラ撒いてしまう祈里。 見ると、相手の荷物も床に散乱してしまったようだ。 「ご、ごめんなさいっ!」 ぶつかってしまった相手の顔も見ず、慌てて荷物を拾い集める。 「いえ、こちらこそ…って、ブッキー?」 「えっ…美希ちゃん…?」 祈里は思わず固まってしまった。 一番会いたかった人。 一番会いたくなかった人。 そんな美希に、出会ってしまったから。 「これでよし…っと」 荷物を拾い終え、立ち上がる二人。 とりあえず、美希に封筒を見られる前に、バッグに入れる事はできた。 「本当にゴメンね、ブッキー。大丈夫だった?」 「うん…私の方こそ、ごめんなさい…」 視線を合わせられない。 目の端に映る美希は、どこか訝しげな表情だ。 「ブッキー、用事じゃなかったっけ。もう済んだの?」 「う…うん…まあ…。美希ちゃんこそ、カズちゃんと一緒じゃないの?」 それがね、と美希。 「ゆうべ電話したんだけど、和希も先約があるんだって。 お陰で、一人寂しくショッピングってワケ」 美希は苦笑混じりに肩をすくめる。 「そ…そうなんだ…」 「でも、ブッキーに会えたのは運が良かったわ。 良かったら、一緒に回らない?」 笑顔の美希だが、祈里は答えに困ってしまう。 「え…その…私…」 「あ、もしかして、これからお昼? だったら、ここのレストラン街に行きましょ! 先月、すっごく美味しいパスタのお店が…」 そう言って、美希は祈里の手を握る。 いつもの調子で、ぎゅっと。 だけど。 「い……いやっ!」 祈里は、美希の手を払いのけてしまった。 「えっ…?」 「あ…」 その瞬間、二人の時間が凍りつく。 美希は、何が起きたか分からない表情を見せていて。 「あ…あの…わ、私……ご、ごめんなさいっ!」 気がついた時には、祈里は美希に背を向けて駆け出していた。 「ちょ…ブッキー!? ブッキー!」 その夜、自分の部屋で。 椅子に座り、勉強机に突っ伏す祈里の姿があった。 「美希ちゃん…」 その名を口にしただけで、胸が苦しくなる。 手のひらに残った、美希の手の温もり。 指先に残った、しなやかな美希の指の感触。 苦しくて、せつなくて、愛しすぎて。 「………」 視線を移した先は、机の上のフォトフレーム。 ミユキさんがいて、ラブちゃんがいて、美希ちゃんがいて、私がいて。 3人でのダンスレッスンを始めた日、記念に撮った写真だ。 あの日、笑顔で迎えてくれた美希ちゃん。 “ようこそブッキー”って、横断幕まで用意してくれて。 帰り道、字を間違えていたことに気付いて、頭を抱えてたっけ。 「せっかくブッキーのために用意したのに…アタシ、完璧じゃない~っ!」 気にしない気にしない、とラブちゃんが笑って。 私も、こっそり苦笑いして。 凹んでいた美希ちゃんも、つられて笑って。 そんな時間が大好きだった。 大好きだった、のに。 「美希ちゃん…」 写真の中で、二人は並んで笑っていた。 今日だって、美希ちゃんは笑ってたのに。 それなのに、私は―。 悔やんでも、悔やんでも、悔やんでも、悔やんでも。 悔やみきれない想いに、祈里の胸は張り裂けそうだった。 「あ…」 バイブレーションの音。 リンクルンのディスプレイには、<蒼乃美希>の文字。 もう、メールは3回も来た。 そしてどうやら、今度は留守電のようだった。 でも、メールを読む気にも、メッセージを聞く気にもなれない。 『もう、寝ちゃおう…』 眠れるかどうかは分からないけれど、とりあえずベッドに入ろう。 椅子から立ち上がり、床に置いてあったバッグを掴む。 結局、今日は捨てられなかった手紙。 またいつか、時間を作って…。 「…あれ…?」 祈里は、異変に気付いた。 バッグの中から出てきた、白い封筒。 美希に宛てたものだが、自分の字ではなかった。 しかも、封筒の隅には会社の名前と住所。 確か、美希がよく登場するファッション誌の出版社だ。 『まさか…!?』 一方、美希の部屋では。 「それじゃ、また明日、レッスンでね。 …もし、もしこれを聞いてくれてたら…連絡、くれると嬉しいな…じゃ…」 メッセージを伝え、電話を切る。 「はぁ…」 そして、出るのはため息。 落ち込んでいても仕方ない。 明日ダンスレッスンで会うのだし、ブッキーにはその時にでも話そう。 そう自分に言い聞かせているが、どうしても気持ちが前向きにならない。 「ブッキー…」 とりあえず、今夜は寝てしまおう。 そう決めて、美希はドアノブに引っかけたままのバッグを掴んだ。 今日の撮影の時、雑誌社の人からもらったチケット。 とあるブランドの発表会への、特別招待券だ。 忘れないうちに、机の中にでもしまっておかなくちゃ…。 「…あれ…?」 美希は、異変に気付いた。 バッグの中から出てきた、白い封筒。 自身に宛てたものだが、どこかで見覚えのある字だった。 しかも、封筒の隅に書かれていたはずの、雑誌社の名前が無い。 美希は首を捻りつつ、封筒を裏返す。 「…あ…」 封筒には、差出人の名が記されていた。 「 山吹 祈里 」 ~ To Be Continued ~ 3-443
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人型ポケモンの一種。 第1タイプは格闘タイプで、第2タイプは様々なタイプのものがいる多様な種族。 ポケモン図鑑では「草・炎・水・電気・エスパー・飛行・悪のいずれかが当てはまる」とされているが、氷タイプなども希少ながら存在している。 ドラゴン、地面はデルタ種。 特性1は「力持ち」が基本。 普通の人間としての姿を持ち、人里に紛れて暮らしている個体もいる。 (人型へとフォルムチェンジしている。ただしダークやトワなどチェンジ不可な個体もいる) 六花によれば、中には四葉財閥という団体のトップとして君臨している者すらいるとか。 里長として存在する「プリキュアクイーン」という別の種もいるが、通常のプリキュアがクイーンに進化することはないとのこと。 (プリキュアナイトによるメガシンカもクイーンは対象外) 技は基本的にプリキュアと同じ。 ただしマシン技は全タイプ(デルタ種含む)のプリキュアの専用技を習得可能。 第1特性は「マルチタイプ」で、第2タイプがノーマルとなる。 共通 初期習得技 ウェザーボール レベル技(Lv) 見切り(9)、猫騙し(13)、往復ビンタ(17)、自然の恵み(18)、スピードスター(21)、瞑想(25)、発勁(29)、ドレインパンチ(33)、捨て身タックル(35)、跳び蹴り(37)、トンボ返り(41)、ワイドガード(45)、飛び跳ねる(49)、跳び膝蹴り(56)、起死回生(63)、波動弾(70) 技マシン 寝言、挑発、自己暗示、岩雪崩、瞑想、秘密の力、メロメロ、威張る、いちゃもん、ストーンエッジ、目覚めるパワー、守る、恩返し、影分身、リフレクター、眠る、気合球、ローキック、敵討ち、剣の舞、トンボ返り、破壊光線、ドレインパンチ、瓦割り、燕返し、しっぺ返し、空元気、アクロバット、投げつける、敵討ち、剣の舞、瓦割り、爪とぎ、自然の恵み、八つ当たり、奮い立てる、穴を掘る、誘惑、輪唱、岩砕き、怪力、ロッククライム 教え技 ダブルチョップ、けたぐり、いびき、叩き落とす、なりきり、手助け、寝言、威張る、自己暗示、岩雪崩、クロスチョップ、爆裂パンチ、馬鹿力、カウンター 卵技 回し蹴り、アンコール、気付け、カウンター、くすぐる、インファイト、バレットパンチ、パワートリック、叩き落とす ※は初期習得していない場合、好感度100で開放される技。 ノーマルタイプ 初期習得技 メガトンキック、トライアタック、願い事 技マシン 雨乞い、日本晴れ、砂嵐、霰 炎タイプ 初期習得技 炎のパンチ、オーバーヒート、フレアドライブ※ 技マシン 火炎放射、大文字、オーバーヒート、焼き尽くす、日本晴れ 水タイプ 初期習得技 水の波動、アクアジェット、ハイドロポンプ 技マシン 水の波動、潮水、波乗り、滝登り、熱湯、雨乞い 電気タイプ 初期習得技 雷パンチ、10万ボルト、雷 技マシン 雷、電撃波、チャージビーム、10万ボルト、ワイルドボルト、ボルトチェンジ 草タイプ 初期習得技 リーフブレード、ウッドホーン、ウッドハンマー 技マシン エナジーボール、ソーラービーム、日本晴れ 氷タイプ 初期習得技 冷凍ビーム、冷凍パンチ、凍える風 技マシン 吹雪、冷凍ビーム、氷の息吹、霰、雪雪崩、滝登り 地面タイプ 初期習得技 地均し、地震、大地の力※ 技マシン 地均し、地震 飛行タイプ 初期習得技 エアスラッシュ、ブレイブバード、暴風※ 技マシン 啄む、空を飛ぶ エスパータイプ 初期習得技 神通力、サイコキネシス、サイコショック 技マシン サイコキネシス、サイコショック ゴーストタイプ 初期習得技 シャドーパンチ、シャドーボール、シャドーダイブ 技マシン ? ドラゴンタイプ 初期習得技 竜の舞、竜の波動、竜の怒り 技マシン ドラゴンクロー、竜の波動、オーバーヒート、雨乞い、日本晴れ 悪タイプ 初期習得技 悪の波動、バークアウト、不意打ち 技マシン 悪の波動、バークアウト 鋼タイプ 初期習得技 バレットパンチ、ラスターカノン、ギアソーサー 技マシン ? プリキュアクイーン 初期習得技 癒しの願い、癒しの鈴、癒しの波動 技マシン プリキュア全タイプの固有技全て
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キラキラ☆プリキュアアラモード レス番号 作品タイトル 作者 備考 現5-21 最近いちかちゃんの様子がおかしい ドキドキ猫キュア 最近、いちかちゃんに避けられてる気がするんです。このままじゃ、大好きなプリンも美味しく食べられないような気がして……。何だかしょんぼりしているひまりに、仲間たちは……? ひまりちゃん誕生日記念のお話です。 現5-46 『とけたプリン』 Mitchell Carroll スイーツの知識を詰め込んで沸騰しそうになっている彼女を、クールダウンしようとした小さな親切。だったんだけど……。ひまりとあきら、二人だけのキラパティは、室温急上昇の予感です。 現5-47 『あきら50%』 Mitchell Carroll 「あきらさん、どうしたんですかっ?」「とりあえず……」「いや、それはそれで……」「ウフフ……」良い子は絶対、真似しちゃダメ! 現5-51 HAPPY BIRTHDAY TO US makiray 「今度の日曜日、キラパティはお休みにします」突然そう宣言したわたしに、「あら、そう」ゆかりさんは、いつもの調子で答えた。よし! みんな、作戦スタートだよっ。今度の日曜日をとびっきり楽しい日にするために、作戦通り4人それぞれの役割を……え? あれれ? 4人じゃなくて……5人!? 現5-55 『London Burning』 Mitchell Carroll スイーツから溢れ出すキラキラル。だけど時には――ダークでビターなその刺激、あなたの舌で、確かめてみる? 現5-79 『眠れるパティスリーの美女』 Mitchell Carroll 昔々……じゃないお話ですが、とあるパティスリーでゆかり姫がおひるねから目覚めなくなってしまいました……。「王子様がキスすると、目覚めるって本当ペコ?」そうなると、あきら王子の出番ですが……? 現5-91 too yellow makiray 秋と言えば……。秋と言えば……。えっと……秋と、言え……ば……。キラパティで秋のフェアをやろう! そうみんなで盛り上がったものの、スイーツ博士・ひまりがなかなかメニューを決められない。一体どうしたの? 心配する仲間たちに、ひまりが語った理由とは。 現5-106 たまには甘えて ドキドキ猫キュア 「あきらさんもうすぐ誕生日なんですよね♪」いちかの言葉に「気持ちだけで嬉しい」と微笑みながら、何だか表情の冴えないあきら。みんなに優しすぎるくらい優しいあなたは嫌いじゃない。だけど……。あきらさん誕生日記念のお話。あきゆかファン必見です! 現5-158 その温もりを感じて ドキドキ猫キュア キラパティでのパーティーの後、ゆかりを送っていくと言い出したあきら。ただ何となく、もう少し側に居たくて。上手く言えないけれど、少しでも自分の気持ちを伝えたくて。そんなあきらに、ゆかりは……。第45話「さよならゆかり!トキメキ☆スイーツクリスマス!」の、その後のお話。 競5-6 かき氷 ドキドキ猫キュア 身体が弱っている時って、何となく甘いものが欲しくなる気がする。それが忘れられない思い出に繋がっているものなら、尚更で……。ツンデレビブリー、炸裂です! 競5-7 甘い印 ドキドキ猫キュア あれから数年。久しぶりに会ったゆかりとあきらの話題は、その後のお互いのこと、そして大好きな仲間たちのこと。二人が食べているのはお互いが作ったあのスイーツ。だって、今日は二人にとって、大切な……。 競5-15 ビブリーの小さなチョコレート makiray 「あんたたちはチョコレートやんないの」ビブリーがキラパティのカウンターでそう問いかけたのは、バレンタインデーが近付いたある日のこと。チョコレートが食べたいの?誰かへのプレゼント?不思議に思った皆の質問に、いつもの調子で答えるビブリー。その時、ひまりが何かに気が付いて……。 競5-24 スイーツを「さかな」に ゾンリー 親友との再会は、懐かしい故郷がすぐそばに現れたみたいで、それでいて今自分が居るこの街が、彼女の目の中でキラキラと輝き出すみたいで。そして当然、再会を祝して手にするのはコレですよねっ。大学生になったひまりに訪れた、夢のような一夜の物語。 全2-353 キラパティの節分(前編) 一六◆6/pMjwqUTk 「鬼は外~」昨年までは、笑顔で口にできた呪い。でも追い出された鬼はどこに行けばいいんだろう。出て行った先で、また豆を投げつけられるのかな? ううん、わかってる。そんな風に考えるべきじゃないってことくらい。だけど私には作れない。きっとあの人も見てるから。 全2-361 キラパティの節分(後編) 一六◆6/pMjwqUTk 「福は内~」鬼が外で、福は内。そうか、福の対が鬼だとしたら、鬼は悪い人のことなんかじゃない。節分の本当の意味は、プリキュアがやってきたことと同じ。キラパティで作ってきたものと同じ。あの人との、約束を守ることなんだって。あ……キラっとひらめいた! 全2-368 『パウンドケーキのその前に』 Mitchell Carroll 普段は大人しいひまりを饒舌にさせるもの。それはスイーツの不思議と――実は困ったことに、もうひとつあったみたいです……。
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「あ」 「ブッキーいらっしゃい」 昨日から続いている雨はいっこうに止みそうもない。傘をさしていても少し濡れてしまった髪の毛。ハンカチで拭いながら見慣れたドアを開けた先には予想外の人物がいて、私の足は止まってしまう。 「パッションちゃん?」 「そんな所にいないで入ったら」 雑誌から顔を上げ、本人不在の部屋のベッドからクッションを一つ掴むと、ぽんと床に置いた。どうやらここに座れということらしい。促されるままそこに腰を下ろすと、彼女はまた雑誌に視線を戻した。 私はとりあえずバッグを置いて、髪に残っていた雫を拭き取る。 「美希ちゃんは?」 「買い物。ブッキー来るからって、飲み物とお菓子とか買いに行ってる」 「雨の中?」 「大雨の中」 場違いなのに、パッションちゃんの微笑がとても綺麗で不覚にも私は見とれてしまった。 「あの、こんな中買いに行かなくてもよかったのに」 「じゃんけんで負けたから」 「楽しそうだね」 もう一度パッションちゃんはふっと小さく笑った。 「お菓子はあるんだけどね。飲み物の買い置き二人で飲んじゃったから」 「ああ。日差しはないけど蒸し暑いもんね」 「そうね」 そうはいってみたものの、空調には人一倍気を遣う美希ちゃんの部屋はいつものように、温度も湿度も完璧な状態。パッションちゃんの隣に行って一緒に雑誌を見ながら、 よっぽど喉渇いたんだね と呟くと、彼女は私と同じくらいの声量で 渇くことをしたから とぽつりと言った。 そして、平然と次のページをめくる。 「……何したの?」 「聞きたい?」 「いいえ…………泊まり?」 「ううん。朝から」 雑誌にパラパラとこぼれ落ちた髪を彼女がかきあげた。ふと、私の視線が一点に集まる。 白い首にぽつんと赤い痕。 ……………………………………………………っ。 「あの、何してたんですか?」 「何してたでしょう?」 雑誌を閉じた彼女はにっこりと眩しいぐらいの笑顔で問い返してきた。聞かなくてもいいのに、むしろ聞かない方がよさそうなのに、私の好奇心がここで話を終わらせてくれそうに………ない。 「……ヤッてたの?」 「祈里からそういうこと聞けるなんてね」 パッションちゃんはへぇと私の発言に感心しているような感じ。ふっと微笑むとそっと私の耳元に顔を近づけてきた。 ふわりと 爽やかな匂いが鼻についた。 ヤッてたわよ びくっと身体が震えた。彼女の声は艶っぽく、口説かれているような狂わされるような不思議な感じになる。 「掃除をね」 「へ?」 「模様替えしたいっていうから手伝ってたの」 「なっっっ!?」 「微妙に変わってるでしょ?ブッキー顔真っ赤よ」 「その首の赤いのはっ?」 「蚊に刺されたの」 クスクスとパッションちゃんが口元に手を当てて笑い出した。 「ちょ、ひどいよ!」 「私は嘘はついてなかったわよ。祈里が勝手に勘違いして」 「もーーーっ」 私は顔を茹でタコのように真っ赤に上気させパッションちゃんをぽかぽかと叩いた。彼女はごめんなさいと謝りながらもその瞳には笑いすぎて涙すら溜まっている。 「ひどいよぉ」 「あはは、ごめんなさい」 パッションちゃんはひとしきり笑った後ごめんねとウィンクして謝った。その仕種の可愛いことといったら。 「うぅ、許さないわけにはいかないじゃない。美人はいいよね」 「ブッキーは可愛いわよ?」 そういいつつ私の頬っぺたをむにっと両手で挟んで引っ張るパッションちゃんは楽しそうで。 「意地悪」 どうやら私にはこの女王様は扱えそうもありません。 「ただいまー……ってどうしたの?」 「ブッキーが機嫌を直してくれないのよ」 部屋の空気を察した美希ちゃんが恐る恐るパッションちゃんに聞くと、苦笑して彼女は答えた。私はベッドの上でクッションを抱きしめたまま二人に背中を向けている。 だって恥ずかしいんだもん。 「何したの?」 「ブッキーが美希の午前中の予定を知りたがったから」 「ちょっとぉー!!」 あははと笑うパッションちゃんに私はクッションを投げつけた。彼女はサラリとそれを受け止める。 「なんだ。ケンカしてるわけじゃないのね」 「だってパッションちゃんが!」 「私は事実を言っただけよ」 「わかったから。ブッキーもこっちおいで」 美希ちゃんがテーブルの上に買ってきた物を並べはじめた。パッションちゃんはそんな美希ちゃんの濡れた髪の毛をタオルで優しく拭いてあげている。 「じゃーん」 美希ちゃんが取り出したのは、私が大好きな店の限定チーズケーキ。ここからだと少し遠いのに。 「ブッキーが喜ぶと思って」 「うん!ありがとう美希ちゃん」 にっこり笑った美希ちゃんはぽんっと私の頭をひと撫で。昔から変わらない彼女の行動。子供っぽいと思われるかもしれないけど、私は彼女のこの行動が大好きだった。 「そりゃブッキーの好きなものは把握してるつもりよ」 「美希ちゃん……」 綺麗を鼻にかけないで、獣医を目指す私のためにテスト前なんかはそっと差し入れをくれるような人。 小さい頃からお姉さんみたいで優しくて、私は美希ちゃんが大好き。 「パッションひゃん何ひゅるの」 そんなことを思っていたらまた横から私の丸い頬っぺたに手が伸びてきた。微妙にさっきより強めに引っ張られてるのは気のせいだろうか。 「これが祈里の胸の柔らかさなのかなぁって」 「変態!!」 「パッション、ブッキーをからかわないで。ほら、食べよ。あたし結構歩いたんだからね」 パッションちゃんの手を取った美希ちゃんは呆れ顔で注意した。 ひりひりする頬っぺたを押さえながら私はパッションちゃんを見る。まさかこんなに親しみやすいとは思わなかった。 「イメージ変わったかも」 「私は祈里に変態のレッテルをはられるのかしら」 「そうじゃなくって!」 「はい、あーん」 「あむっ」 またヒートアップしかけた私を美希ちゃんのフォークに刺さったモンブランが遮った。口の中に甘い味が広がって一瞬で幸せな気持ちになった。 「美味しい?」 「美味しい!」 「美希、私には?」 「ん、食べていいよ?」 美希ちゃんは自分のお皿をパッションちゃんの方に持っていく。パッションちゃんは不満そうにモンブランにフォークを刺した。 もしかして、さっきちょっかいかけてきたのも…… 「何怒ってるの?」 「別に……」 「美希ちゃん、パッションちゃんは美希ちゃんにフォークッむっ!!」 パシィと私の言葉は口ごとパッションちゃんの手に遮られた。 美希ちゃんはきょとんとしている。 やっぱり……。 「今日はどうしたの二人とも」 「美希、ジュースじゃなくて紅茶飲みたいわ。アールグレイで」 「え、ああ、うん。いれてくるね。ミルクは?」 「アイスでストレート」 美希ちゃんが部屋を出ていくと、ようやく私は口を解放された。 「ヤキモチ妬いてたのね」 「…………」 「美希ちゃん鈍感なとこあるしね」 「…………」 「パッションちゃん可愛いね」 「もう」 顔を真っ赤にした彼女を見れるなんてかなり貴重だろう。 「美希ちゃんと間接ちゅーしちゃった」 フォークをくるくると彼女に見せると、パッションちゃんはからかわれていることにますます顔を赤くした。 「美希はブッキーたちのことは特別だから」 「パッションちゃんも違う意味で特別でしょ?美希ちゃん一人占めするのはダメー」 「そうだけど。あんなことしなくても。しかも頭撫でられてるし……」 「こんなにヤキモチ妬きだったんだ」 彼女はクッションを握りしめ少し拗ねている。何だろうこの可愛い生き物は。 「ブッキーは意地悪ね」 「えー、初めて言われた」 クスクスと笑って、あーんとチーズケーキを差し出すと軽く睨みつけながらも食べてくれた。 今だ雨は降り続いている。 ラブラブな二人には悪いけど、居心地のいいこの部屋にもう少し居座ろうと思った。 END
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美希「うかない顔ね、せつな。どうかしたの?」 せつな「私ね、気が付かないうちに、視力がかなり落ちてるみたいなの。」 ラブ「えーっ!?ドーナツの穴が、よく見えないとか?」 せつな「それって悪過ぎると思うけど・・・。ほら、この前学校で視力検査があったでしょう?その結果が、2.0だったの。」 ラ・美「・・・・・・。」 祈里「あのね、せつなちゃん。学校の視力検査では、2.0以上は測らないの。それくらいよく見えれば、もう十分だから、って。」 せつな「そうなの?」 ラブ「じゃあさ、ちゃんと測ったら、せつなの視力ってどれくらいなの?」 せつな「そうね・・・。今まで、4.0を切ったことは無いわ。」 ラブ「すごっ・・・。」 美希「どんだけ見えるのよ・・・。」 祈里「そう言えば、ラブちゃんも目はいいんだよね?」 美希「ちょっとブッキー!このタイミングで訊く?って言うか、「目は」って・・・」 ラブ「うん!あたしは小学校上がってからずーっと、視力1.5だよっ!」 美希「・・・さすがラブだわ。気にしないのね。」 祈里「いいなぁ。美希ちゃんは?」 美希「アタシは・・・ラブやせつなほどは、良くないわよ。」 祈里「そうなんだ。わたしは最近、黒板の文字が見えにくくなっちゃって。」 ラブ「ブッキーは、勉強のしすぎだよぉ。あのね、遠いところを見るようにするといいんだって。あたしとせつなは、ベランダでしょっちゅう、星や月を見てるもんねっ!」 せつな「ええ。でも、私は月よりもラブの・・・」 ラブ「え?何か言った?せつな。」 せつな「ううん、何でもないの!(月よりもラブの顔を見てる、なんて言えない・・・。)」 祈里「せつなちゃん、顔、真っ赤・・・。」 美希「ふふ~ん。まあその話は後でじ~っくり聞くとして、遠くを見渡せる場所なら、他にもあるんじゃない?」 ――ということで、みんなでクローバーの丘へ。 美希「やっぱり、ここからなら四つ葉町がひと目で見渡せるわね。」 ラブ「うわーっ、見て見て、あの犬!あの人、可愛い巻き毛の犬を二匹連れているよ!」 せつな「ホントね。良く似た犬だわ。兄弟かしら。」 祈里「ううん、お友達だと思うけど、兄弟じゃないわ。手前の子はアメリカン・コッカー・スパニエルで、向こう側の子がイングリッシュ・コッカー・スパニエルね。良く似た犬種だけど、ほら、手前の子の方が、頭の形が丸いし、毛の長さが少し長いでしょう?」 ラブ「たはは~。毛が長いって言われても・・・。」 美希「そんなの、遠すぎてわかんないわよ。」 せつな「凄いじゃない、ブッキー。よく見えるわね。」 祈里「え、そう?やっぱり好きなものだと、違うのかしら。」 ラブ「わかった!ブッキーは、遠くのワンちゃんを見るようにすればいいんだよ。じゃあじゃあ、美希たんは~・・・」 せつな「ねぇ、美希。あそこに見える、赤い看板って何かしら。」 美希「きゃぁぁぁぁ~!た、た、たたた・・・」 ラブ「ああ、あれは駅前のタコ焼き屋さんだよ。美希たん、あんな小さな看板、読めたの?じゃあ全然、目が悪くなんかないじゃん。」 せつな「やっぱり、好きなものと同じくらい、嫌いなものって目に入っちゃうものなのね。」 美希「コラ、せつな~!もう、許さないんだからぁ!!」 ~END~